セミナーレポート「3万社を見てわかった企業の魅力を引き出す採用ブランディング 採用競合との差別化を図るためのリクルートメントマーケティングセミナー」

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『リクルートメントマーケティング』や『採用マーケティング』が人事・経営者間でホットワードになってきております。

ミレニアル世代やZ世代と呼ばれるデジタルネイティブが社会に参入し、採用市場でも情報の消費量よりも流通量のほうが過多になり、企業は従来のような採用手法では満足に人材を獲得することができなくなっているためです。

企業に今求められる事は、採用ターゲット(潜在層含む)に対し、自社の情報を認知させ、理解を深め、興味喚起し、ファンになるまでの関係性を育むことです。

「いかに自社情報を採用ターゲットに認知させ、リクルーティング活動に結び付けるのか」。採用ブランディングやリファラル採用、インターナルブランディングの観点で展開されたセミナーの内容をお伝えします。

登壇講師

  • ウォンテッドリー株式会社 Recruitment Marketing Evangelist / Business Hiring Manager小池 弾 氏

    名古屋出身。大手SIer、HRスタートアップを経て、2018年1月にウォンテッドリーのビジネス採用担当としてジョイン。現在は、ビジネス組織の採用/教育/文化醸成等に関わる。

  • 株式会社MyRefer 取締役COO細田 亮佑

    パーソルキャリア(インテリジェンス)新卒入社。「ミイダス(MIIDAS)」の立ち上げ。編集長としてマーケティングを統括。TOP 25 Global B2B Marketer of 2017。2018年より株式会社MyReferの取締役COOに就任。パーソルホールディングスより「MyRefer」をMBO。

第1部『自社の魅力を見つけ出すことから始まる。採用ブランドをどう作り出すのか。』
Presented by ウォンテッドリー株式会社 小池氏

何のためにマーケティング観点が必要なのか

近年、AI普及など労働環境の変化などから就職を取り巻く環境が急速に変化しています。その中で「採用難を打開するには新しいことをしなければ」と新たな採用ツール、管理ツールの導入を検討する企業も増えてきています。しかし、ツールの数が増えるに従って「これは何のためにやるものだっけ?」と整理が追い付かなくなっている企業が増えているのも現状です。
そうした流れから、これらを整理する上位概念として注目されているのが「リクルートメントマーケティング」というフレームワークです。

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リクルートメントマーケティングはそれ自体で採用課題を解決するものではなく、企業の採用活動をファネルに沿ってモデル化することにより、各ツールの導入の目的や採用の課題感を整理していくための“上位フレームワーク”です。

なぜマーケティング観点が必要なのか

こと中途採用の領域においては、欠員補充や事業戦略にもとづいた即戦力採用などが背景にあり、エントリーから採用までの短い期間にリソースを集中投下する採用手法が求められてきた反面、中長期的な戦略についてはそこまでフォーカスされていませんでした。
しかし、昨今の採用難の状況下では、転職意欲が表面化していない潜在的な候補者にアプローチをし、情報発信を通じて自社への興味喚起を促したり、継続的な接点を作り志望度を育んだりといった息の長い採用活動をプランニングしていかないと採用が成り立たない時代になっています。
現在の採用活動においては、中長期的な戦略として、リードジェネレーションやナーチャリング、ブランディングのようなマーケティングの観点が必要なのです。

ポイントになるのは「採用ブランディング」

採用におけるブランディングは、「候補者に認知されたら終わり」ではなく、認知から入社・定着までのコミュニケーション全般に関係するものです。企業のコンセプトを正しく認知させ、カルチャーフィットする人材を獲得(入社)し、入社してからのコミュニケーションデザインがなされることで、事業の成長を担う人材が定着していく。
この一連のフローが全て整理されて初めて「採用ブランディング」ができている状態であると考えています。

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採用ブランディングについて考える際、インナーの状態がコンセプトにマッチしていることが大切です。コンセプトにマッチした人材が社内で定着することがエンゲージメントを高め、正しい認知と獲得につながり、定着につながっていきます。

具体的には当社では技術者の採用をするにあたり、「高い技術レベル」というコンセプトを軸に置いた採用ブランディングを行なっています。
手法としては媒体などにどんどん出稿するのではなく、エンジニアの勉強会を主催したり、登壇資料や技術ブログを公開しSNSで拡散するなど、技術広報に力をいれています。
『この人と働きたい』だけではなく、『この技術を学びたい』『●●のスキルについてディスカッションしたい』と想起させるような切り口でイベントを設計しSNSで発信することで、コンセプトにズレない採用を実現しています。

この、正しいコンセプトで採用された人材が定着していくことが、次の採用にも繋がり、採用ブランディングができあがっていくものと思っています。

第2部『インターナルブランディングからリファラルへ。採用ブランドをどう広げるのか。』
Presented by 株式会社MyRefer 細田

採用後、どのようにインナーブランディング(社内広報)を活用しどうやってファン作りをするか

まず背景として、個人と企業の関係性におきている2つの変化を理解する必要があります。

1つ目に、今まではエントリーから採用までの関係性を考えればよかったのですが、今は、いかに認知させて興味喚起させて、入ってからどうエンゲージさせていくのかまで考えて施策を検討する必要が出てきていること。つまり、従前の一過性の採用スタイルから、企業と個人の持続可能な関係性を持ち続けることへの変化。

2つ目に、情報の過剰流通によりリアリティのある情報の価値が上がっている、という変化。
このような変化に対応するため、リクルートメントマーケティングとインターナルブランディングを活用した社員のファン化が注目を集めています。

リクルートメントマーケティングを活用したファン化について

小池氏からの話にも出たように、ファン化を促すためにはまずは、認知させ(リードジェネレーション)から興味をもってもらい(リードナーチャリング)、“どうやって自社を知ってもらい好きになってもらうか”。そして、定着する過程において、ステップアップしたい人には新ポジション提示するなど、最適な人材をどう配置するか。
また、社員が退職した後まで視野に入れ、“活躍人材にどのようにして戻ってきてもらうか”までを考えてファン化施策を考えることが大切になります。

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特に人材業界の社員の場合、当時の後輩先輩が退職して企業の人事に転職してお客様になったりするケースや、口コミサイトに投稿して、それを未来の新卒入社社員(学生)や転職者が見ているなどのケースも考えられます。
そういった側面からも、社員をファン化させ、友好的な関係性を保ち続ける必要があります。

インターナルブランディング(社内広報)を活用したファン化について

社員が発するメッセージングは最もリアリティがあり、正しく自社の価値や魅力が伝わりやすく各ステークホルダーに最も響きます。
リクルートメントマーケティングを成功させるには自社社員や元社員をファン化させることが近道であり、インターナルブランディング(社内広報)が重要視されています

ではどのようにファン化施策を進めていけばいいのか?
施策の目的整理やKPI設定、どこから情報を集めてどう配信するのか、悩まれる企業も多いのですが、多くの企業に見られる状況として、そもそもKPIやKGIを設定できない。また、促進度合いの測定に課題感を感じている企業が多いということです。

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ではどうすればいいのか?我々はリファラル採用を導入することの解決策も提案しています。

社内広報の成果指標としてeNPSを取りに行くことが多いのですが、eNPSが高いにも関わらず実際に友人や知人に自社をお薦めしてくれなかったり、eNPS が低いにもかかわらず社員紹介に協力してくれたりするケースもあるのではないでしょうか。
リファラル採用であれば、社内広報施策に対する結果と因果関係が強く、測定可能な指標をKGIに設定し、社員の行動をベースにしたプロセスを可視化することができるためおすすめしています。

より深く「ファン創造」という採用マーケティング活動とリファラル採用の関係性が知りたい方へ

MyReferサイトにて、無料ダウンロード資料を用意させていただいております。
こちらをご参考ください。

MyRefer社での具体的施策

当社では、「自身を社長の立場に置き換えて、新規事業を立ち上げる」などのお題を課したワークをキックオフの場で行いビジョン浸透を図ったり、リファラル採用に協力した社員を表彰したりするなどしてファン化促進を図っています。

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また、社外の人を呼び込むイベント「鮨パ」を定期的に開催し、“転職してないけどMyReferに興味がある”という社外のファンを増やす施策も打っています。自社のファンになってくれる方を着実に増やし、中長期的にコンセプトにマッチした人材を採用することができるとかんがえています。

このように社員やステークホルダーと有効な関係を保ち続ける関係性が、将来的な採用にもつながっていきます。

質疑応答

ライティングが苦手です。どうやったらうまくなりますか?

小池氏:
採用広報=コンテンツ作り、ではありませんが…。
認知獲得フェーズでの打ち出しは、表現はプロフェッショナルに任せるなど、こだわっています。また、認知後の興味喚起のフェーズでは、リアルを見せるほうがズレがないので、きれいさより発信することに軸足をくよう意識しています。

細田:
全社員広報で推進しています。だれが書くかにはこだわりはないのですが、“なぜ” “なんで” という背景をいかに深掘るかはこだわっています。

小池氏:
その会社のエッセンスは現場に眠っているという感覚はありますね。コアコンセプトは誰が話してもブレないことが大事。採用ブランディング専門でやっているライターは多くいますので、社内外のリソースをうまく使うことが大事なんじゃないかと。

社員を巻き込む良い方法が悩みです
インセンティブや評価制度の整備ではなく長続きする方法は?

細田:
方法は2つ。まず1つは “強制させる” こと。トップダウンでうまく機能しているところはあります。
2つ目の方法として、主に若い会社や従業員数が少ない会社に有効ですが、文化醸成を図ること。ある調査によるとインセンティブ目当てでリファラル採用に参加するのは11.7%。
多くは、「誰かの役に立ちたい。助けてあげたい」という想い
が人を動かします。

編集後記

今回取り上げた2つのブランディング施策は中長期的な手法。
成果がすぐに見えにくく、果たして今打っている施策が正しいのか?どれだけ効果を生めるのか?採用担当者としては不安になる気持ちがよくわかります。導入の社内決裁を通すのも一苦労ですよね。
当日開催された懇親会の場でも、各社の担当者様からそのような声がチラホラと…
客観的・定量的に促進度合いを測れるツールの導入の必要性を改めて感じました。