働き方改革の課題をHR Techで解決!『日経 働き方改革カンファレンス』潜入レポート

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第2回ケーススタディーから学ぶ働き方カンファレンス

4月1日より「働き方改革関連法」が順次施行され、ますます日本社会で働き方の変化が迫られています。実際に、働き方改革で解決すべき課題とは何でしょう?そして課題解決のためには何から始めればいいのでしょうか?

このような悩みに対して、2019年3月19日に日経主催の「働き方改革カンファレンス」が開催され、およそ200名が参加しました。
今回は、当日第3部「働き方改革を推進する注目のHR Tech企業」より、イシン吉田秀明氏モデレーター、ベネフィット・ワン白石徳生氏とMyRefer鈴木貴史氏の登壇内容を抜粋してお届けします。

登壇講師

  • 株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長白石 徳生 氏

    1989年に拓殖大学政経学部を卒業後、96年パソナグループの社内ベンチャー第1号としてビジネス・コープ(現ベネフィット・ワン)を設立、取締役就任。2000年同社代表取締役社長に就任。JASDAQ、東証二部を経て18年に東証一部上場を果たす。福利厚生サービスのみならず、インセンティブ、ヘルスケア、CRM、BTMなど事業の多角化を推進。12年に海外展開を開始し、アジア各国および米国・欧州に現地法人を設立。現在会員数は750万人を超え、福利厚生事業で培ったユーザー課金型のビジネスモデルを強みに、新しい「サービスの流通創造」を目指す。/教育/文化醸成等に関わる。

  • 株式会社MyRefer 代表取締役社長CEO鈴木 貴史 氏

    新卒でインテリジェンス(現パーソル)に入社。ITネット業界を中心に企業の採用を支援した後、サービス開発部にて新規事業企画に従事。2014年、グループ歴代最年少で社内ベンチャー制度「0to1」を通過し、1億円の社内出資の元国内初のリファラルリクルーティング事業 MyReferを立ち上げる。9ヶ月で黒字化を実現し事業拡大。18年、事業譲渡によりMBOを経て完全独立。パーソル初となるスピンアウトベンチャーMyReferを設立、代表取締役社長CEOに就任。

  • モデレーター イシン株式会社 専務取締役 吉田 秀明 氏

目次

働き方改革の推進における日本企業の課題とトレンド

働き方カンファレンス会場全体

吉田氏:
まずは「働き方改革」に関連する日本企業の課題、市場トレンドの変化をお聞かせください

白石氏:
今は「経営維新」として、100年に1回の経営マネジメント変革のタイミングが来ていると思います。というのも、従来の「デフレ、人手あまり、アナログ、ガラパゴス」から「インフレ、人手不足、デジタル化、グローバルスタンダード」へと環境が180度変わってきているからです。

そして、その経営改革の一角が働き方改革だと考えます。企業が継続的に発展するには、経営改革を進めなければならず、そのために生産性をあげる働き方改革が必要です。
今回は、経営改革のための働き方改革として、健康経営のソリューションについてご紹介したいと思います。

鈴木氏:
採用・転職にフォーカスすると、日本のHR業界が過渡期だと考えられます。今まで日本企業はガラパゴス化されてきました。終身雇用・年功序列が前提としてありましたし、高度経済成長期では全員同じ方向をみて走ると結果が出た時代だったんです。
日本の平均生涯転職回数は1,2回と、海外のそれと比べて圧倒的に少なく、雇用の流動化と最適配置が起こっていない状況でした。

しかし、今後は個人と組織のあり方も変わってきています。ミレニアル世代は一生”所属する”のではなく、組織と”つながる”ように。これからは日本のあらゆる企業で、雇用のあり方、採用のあり方、つながりのあり方が変わらなければいけない時代になっていると考えます。
そのため、これからの日本企業では「エンゲージメントの向上」が重要になっていきます。単なる従業員エンゲージメントだけではなく、企業と関わる全ての人とつながり続ける、ファンを増やしていく必要があるので、それに対するソリューションをご紹介します。

ベネフィット・ワン白石氏より

BPOを活用することがグローバルスタンダード

吉田氏:
先ほどのお話では「経営改革のための働き方改革」ということでしたが、生産性を上げる働き方改革のためにどのような経営改革を進めていくことが必要なのでしょうか?

白石氏:
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用することが第一歩だと考えます。日本は30年間人手あまりで、かつ雇用を維持する必要があったため、間接業務も社内で請け負うことが当たり前でした。しかし、グローバルスタンダードでは間接業務を外出しすることが基本です。

間接業務のアウトソーシングとして、例えばNTTグループさんでもグループ全体で福利厚生のサービスを活用いただいています。今後は福利厚生だけでなく、給与計算、研修、健康までトータルでのクラウド提供の準備を進めているところです。
BPOが生産性向上のキーファクタ

ビッグデータを活用する未来

白石氏:
BPOではただ業務をうけるだけでなく、社員さんのデータをお預かりすることになるので、あらゆるビッグデータを活用していくことができます。

企業では、組織分析やタレントマネジメントによって、科学データに基づいた人材配置を進めていくことができます。例えば、能力やパフォーマンスの人事データや、さらには健康データまで。メンタルとフィジカルがその人のパフォーマンスになるので、健康データも大きな影響を持つのです。

もう一つ、従業員個々人がセルフマネジメントしながら、キャリアプランから老後のライフプランまで設計するお手伝いもできるだろうと考えています。

MyRefer鈴木氏より

企業を取り巻く全員と深く良好につながり続けることが重要

吉田氏:
働き方改革においては「エンゲージメントの向上」が重要だということでしたが、エンゲージメントとはつまり何でしょうか?

鈴木氏:
エンゲージメントとは、HR領域でいうと「企業と社員が信頼しあって、互いに貢献し合う概念」。
またマーケティング領域でいうと「企業や自社ブランドに対する消費者の深い関係性」ですね。実は、アメリカでは5年前から”Recruting is Marketing”ということが言われてきました。顕在化した候補者をエージェントや求人で採るのではなく、自社と繋がる全員をファンにする長期的なコミュニケーションを取り、関係性を深めていくことが重要だと。

一つの解釈として、エンゲージメント向上とは社員にだけいい環境を与えて満足してもらうことではなくて、「企業を取り巻く全員と深く良好につながり続けること」と考えています。

リファラル採用を基軸に、3つのエンゲージメントの向上施策へ

吉田氏:
では、どうやってエンゲージメントを高めればよいのでしょうか?構成要素からお伺いしたいです。

鈴木氏:
エンゲージメントの要素としてはハード・ソフト両方があります。社員のエンゲージメントを高めるために給料をあげるという話もよく聞きますが、給与水準などといったハードな要因はエンゲージメントを下げないために必要な衛生要因と言われているものです。

実は、エンゲージメントを向上させるのはソフトな部分。
①企業のビジョン理念浸透や、②社員に対する成長機会の提供、そして③当事者意識の醸成が重要になってくると考えています。

エンゲージメントの構成要素

  • ① ビジョン・理念の浸透は、社内広報(インターナルブランディング)をすることが重要。
  • ② 成長機会の提供は、人事配置や社内異動(インターナルモビリティ)が有効です。実はアメリカでは年間転職者の20%が社内異動でまかなわれているように、社内の人の適材適所で生産性を向上させることができます。
  • ③ 当事者意識の醸成は、経営資源であるヒトモノカネに社員が携わることだと考えます。

そしてこれらは、リファラル採用のコミュニケーションの一環で対応できると考えています。
というのは、リファラル採用、つまり全社員採用を実施すると、社員は自分の言葉で自社を紹介することで当事者意識が醸成されます。会社は協力してもらうためにビジョンや理念の浸透をしなければならないため、社内広報につながります。
そして、社員は自社の空きポストを認知して紹介する過程で「自分も応募したい!」と社内の内部異動を促進することにつながります。

つまり、リファラル採用を基軸として3つのエンゲージメント要素を高めることができると考えます。

最後に

吉田氏:
最後に働き方改革に対する総括とメッセージをいただければと思います。

白石氏:
働き方改革は経営トップマネジメントから見てもトッププライオリティに近いテーマだと思います。人事だけでなく全社の経営を変えていくものだと。

まだまだ過去のルールを死守して仕事の効率化されていないことが多いので、仕事のオペレーションにおいて我が社ルールをどれだけ捨てられるかが大事だと考えます。

鈴木氏:
「つながりで経営を加速する」ということが伝えたいメッセージです。
もちろん採用に関しても、アライアンスや経営パートナーに関しても、人と人との関係こそが最も信頼できる情報を流通できる手段だと思っています。ここを推進することが働き方改革の鍵になるのではないかと。

これまでの日本の経営は性善説ではなく性悪説に基づいてきたため、SNSを使うのがNGな会社も多かった。ですが、1人あたりのビジネスマンのFacebookの友達数が平均200人いると言われている今、1000人の会社であれば20万人にアプローチできる手段があるということです。
組織のエンゲージメントを高めるために、まずは自社の「社員のつながり」を活用することから始められるということを提唱したいと思います。

■イベント概要:https://events.nikkei.co.jp/12272/