エンゲージメントとは?人事における重要性と向上させる方法

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エンゲージメントとは?人事における重要性と向上させる方法

近年注目されている「エンゲージメント」について、みなさんはどの程度理解していますか?いつの間にか使われるようになった言葉だけに、実はよく知らないけど今更意味を聞けないという方も多いと思います。
今回は、エンゲージメントの基本的な意味や、人事の分野で使用されるようになった背景を説明したうえで、従業員エンゲージメントを向上させる具体的な方法を解説します。人材の獲得や維持について日々考えている人事担当者の方必見の内容です!

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エンゲージメントとは?

最近色々な業界で見聞きするようになったエンゲージメントとは、言葉の意味としては「約束」「契約」という意味です。一般的には婚約指輪のことをエンゲージリングと呼ぶくらいにしか使わない言葉ですが、業界用語としては、「企業と顧客との信頼関係」を分析し、購買に繋げるマーケティング用語として使われていました。現在では人事やSNS関連など、より幅広い分野でも活用されている言葉です。

人事におけるエンゲージメント

人事におけるエンゲージメント

人事の分野においてエンゲージメントというと、従業員の企業に対する愛着心と解釈されることが多いですが、さらに深い意味では、企業と従業員が信頼し合い、互いに貢献し合う概念のことを指します。まずは、人事とエンゲージメントの関りや、その重要性について確認しましょう。

エンゲージメントが人事部門に浸透してきた背景

元々マーケティング用語として使用されていた概念が、どのように人事部門に浸透してきたのかというと、その背景には労働人口の減少などにより経営の不確実性が増したことが大きく関係しています。
労働人口が多かった時代は、企業は従業員に対し、終身雇用や年功序列の昇進を約束できました。しかし少子高齢社会に突入してからは、従来のような企業と従業員の主従関係を結べなくなったのです。
一時は成果主義の報酬制度に切り替えるなどして従来型の働き方から脱却する試みもありましたが、それも完全には成功しなかったのが実際のところです。
というのも、成果主義であれば、優秀な人材はより良い待遇を求めて転職してしまうからです。その結果多くの企業では経営層候補の人材流出に頭を悩ませることとなりました。そこで、企業と従業員の新たな関係性を構築する必要性が生じたため、エンゲージメントという概念が人事部門にも取り入れられるようになったのです。

エンゲージメントの重要性

過去の労働環境を思い返してみると分かる通り、かつては従業員がサービス残業で会社に尽くしたり、逆に会社が従業員に高い報酬を払って優秀な人材を確保したりと、一方的な関係性が目立ちました。その点従業員エンゲージメントを向上させるという試みは、従業員と企業の関係が対等になり、お互いが同じ方向に向かって成長できるというメリットがあります。
エンゲージメントの概念では、単に従業員の「満足度」を上げるだけでなく、「愛着心」に注目するため業績に繋がると言われています。愛着心を持った従業員が増えれば、企業は優秀な人材の離職を防ぐことができ、組織力を強化できるのです。

従業員エンゲージメント3つの測定指標

前述した内容から従業員エンゲージメントが重要だということは分かりましたが、ではどうやって従業員のエンゲージメントを測定するのでしょうか?ここでは従業員エンゲージメント測定に重要である3つの測定指標をご紹介していきます。

  • エンゲージメント総合指標
  • ワークエンゲージメント指標
  • エンゲージメントドライバー指標

①エンゲージメント総合指標

エンゲージメント総合指標とは、企業に対して従業員がどのように評価しているか?想いがあるか?測る指標になり、下記3つの要素で構成されています。

・eNPS(employee Net Promoter Score):現在働いている企業を知人・友人に紹介したいか
・総合満足度:総合的に見た会社への満足度
・継続勤務意向:現在働いている企業で今後も働き続けたいか

②ワークエンゲージメント指標

ワークエンゲージメント指標とは、従業員が仕事に対して熱意ややりがいを持てているか?仕事に没頭できるほど楽しめているか?測る指標になり、オランダのユトレヒト大学、シャウフェリ教授らによって提唱されているUWES(Utrecht Work Engagement Scale)では下記3つの要素で構成されています。

・活力:仕事を通して活力を得ている
・熱意:仕事に対してやりがいや誇りを感じている
・没頭:仕事を楽しみ集中することができている

③エンゲージメントドライバー指標

エンゲージメントドライバー指標とは、従業員エンゲージメントに影響を与える主な要因になり、下記3つの要素で構成されています。

・組織ドライバー:企業と従業員の状態(職場環境や人間関係など)
・職務ドライバー:職務と従業員の状態(職務に対する満足度・難易度など)
・個人ドライバー:従業員個人の状態(個人の資質や状態)

従業員エンゲージメントの調べ方・測定方法

従業員エンゲージメントの指標についてご紹介しましたが、ではどうやって従業員のエンゲージメントを測定するのでしょうか?ここでは一般的な測定方法2種類を紹介していきます。

従業員エンゲージメントサーベイ(頻度少ない・長期)

従業員エンゲージメントサーベイとは、半年~1年に1回程度行われる従業員アンケートのことを指します。

アンケート頻度が少ないので、1回のアンケートで多くの設問が用意されます。あらゆる角度から調査を行うことができますが、回答者の負担が大きい点がデメリットになるでしょう。

従業員パルスサーベイ(頻度多い・短期)

従業員パルスサーベイとは、週~月に1回程度行われる従業員アンケートのことを指します。

アンケート頻度が多いが、アンケート数は少なく、回答者の負担が小さい点がメリットです。また、エンゲージメントサーベイと異なり、従業員の直近の状態を把握できることもメリットだといえるでしょう。

従業員エンゲージメントを向上させる方法

従業員エンゲージメントを向上させる方法

では、実際に従業員エンゲージメントを向上させるにはどうすれば良いのか、その方法を確認しましょう。

自社の実態を把握する

初めに行うのは、社員が企業に対して「どんな感情を抱いているか」を分析することです。仕事、対人関係、キャリア形成、慣行、企業文化などについてアンケートを収集しましょう。ただし、ここでは、従業員満足度を調べるわけではないので、項目の作成には注意が必要です。「満足している」というのは、言い換えれば「不満ではない」という状態であり、会社に愛着心があるかどうかとは別の話です。
どのような質問形式であれば従業員の感情を読み取れるか、というのは考えてみると意外と難しいものです。そのような時にはエンゲージメント測定に長けた人事コンサルティング会社を利用するのも良いでしょう。

ガイドラインを作成する

次に、自社の価値観や企業理念を従業員と共有するためのガイドラインを作成します。大切なのは、企業が従業員に対し求める能力や行動を、明確に示すことです。企業が何を求めていて、何をすればキャリアアップに繋がるのかイメージできれば、上昇志向の強い人材を確保するのに有利になります。

労働環境の整備

ここまでの下地が整ったら、実際に労働環境の整備に取り掛かりましょう。上層部の人間だけが会社の問題を解決し、経営の方向性を決めている場合、下層部の従業員は当事者意識を持てないため、どうしても会社に対する愛着心は育ちにくいと言えます。そこで、従業員が主体的に会社組織を改善できる制度や施策を策定しましょう。従業員自身で働きやすい職場を作っていくという環境が整えば、長期的で安定した雇用が見込めます。そのためには、従業員同士が尊重し合えるような関係性を築くマネジメントの強化も重要です。上司と部下の間で面談を行うなど、キャリアアップについて話し合える機会を定期的に設けましょう。
また、社内公募制度や社内FA制度による環境構築支援にも努めましょう。これは増員したい部署がある場合に上層部や人事部から一方的に異動を命じるのではなく、業務内容や必要とする能力、条件などを公開し社内で募集するという制度です。人材の適材適所の配置が可能になるだけでなく、従業員のモチベーションアップにも繋がります。加えて、表彰や褒賞制度を導入し、目に見える形で評価する制度を構築すれば、従業員は仕事に対してやりがいを感じられるようになるでしょう。

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従業員エンゲージメントが高い企業の事例

従業員エンゲージメントを高めることに成功した企業は、生産性向上やリファラル採用への効果など企業実績でも成果をあげることができます。こちらではJapan Referral Recruiting AwardでEngagement賞を受賞された2社の事例をご紹介していきます。

株式会社入船

株式会社入船では、離職率の引き下げや社員登用促進を含めたエンゲージメント向上に課題がありました。
MyReferを活用して毎週社長の声を社内ニュースから発信を行うなど、既存スタッフや卒業スタッフが興味を持って自社を理解し、語りたくなるようなインナーブランディングを通してエンゲージメント向上を実現されました。

「Japan Referral Recruiting Award 2021」アワード受賞企業12社とリクルーター3名の成功の軌跡

株式会社岐阜タンメンBBC

株式会社岐阜タンメンBBCでは、帰属意識が高い社員は一部に限られており、全体の帰属意識を底上げする仕組みができておらず、また、従業員エンゲージメントを可視化できていないという課題がありました。
「リファラルによって自然と人が集まる文化の醸成」を中長期のゴールとして、全社で帰属意識を底上する施策としてリファラル採用に取り組まれ、自社の採用とエンゲージメントに変革を起こしました。

「Japan Referral Recruiting Award 2022」アワード受賞企業8社とリクルーター2名の成功の軌跡

エンゲージメントは人事にも重要な役割を果たす

エンゲージメントという用語がどのように使われていて、人事部門にどう関係してくるのか解説してきました。混同されがちな従業員満足度とエンゲージメントは別物で、業績への影響の仕方も全く異なるというのは知らない方も多かったのではないしょうか。単に企業への愛着心を育てるという意味だけでなく、企業と従業員が信頼しあい、貢献しあうことが、本当のエンゲージメント向上の目的であることが分かっていただけたと思います。これまで人材確保に頭を悩ませていた人事担当の方は、ぜひ、今回ご紹介した手順を踏んで、従業員エンゲージメントの向上を目指してみてはいかがでしょうか?

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