インターナルブランディングがリファラル採用を加速する。エイチームの企業文化作りとは?【有識者の声】

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リファラル採用とインターナルブランディング、どっちを先に取り組むべき?「そもそも社員のロイヤルティが低いから、リファラル採用が難しい」、「社員が会社のことをよく知らない」、「社外の方へどのように発信したらいいのか分からない」など……リファラル採用を運用していく上で、インターナルブランディングについて悩みを抱える企業も多いのではないでしょうか。

スマホ向けゲームや「引越し侍」などのWebサービスを運営する総合IT企業株式会社エイチーム。2019年5月において、社員1000人を超え、中途採用においては毎月10名以上が新たに入社しているそう。エイチームの採用の強みは、「全社員採用」の文化が根付いていること。今回は、人事広報を担当する安藤様に、インターナルブランディングとリファラル採用についてお話を伺いました。

リファラル採用で大事なのは“企業文化作り”。エイチームでは社内コミュニケーションを増やし、インターナルブランディングを積極的に行っているとのこと――。

株式会社エイチーム
人事広報 安藤 春香
2011年、株式会社リクルートジョブズに入社。4年にわたって求人媒体の企画営業職で活躍し、HR領域の知見を深める。その後、「新たなビジネスを創出する企業で、培ってきた経験を活かし、採用・育成・教育・組織活性化に取り組みたい」と考え、2015年に株式会社エイチームへ入社。人材開発グループに所属し中途採用に取り組む。2019年よりIR/ PRグループにて人事広報を担当。

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リファラル採用導入・運用事例
『Net・広告編』

経営理念をつきつめると全社員採用になった

まず、エイチームはどんな会社ですか?

我々は「みんなで幸せになれる会社にすること」と「今から100年続く会社にすること」を経営理念に掲げています。

幸せというのは、「みんなから必要とされる存在であること」「金銭的に裕福であること」「幸せにしたい人を幸せにできること」と定義しています。そして、世の中やユーザから必要とされるサービスを提供して、成長し続けることで、今から永続的に100年続く会社にしていくことを目指しています。

エイチームでは、社員全員で採用に取り組んでいると伺いました。

いわゆる”全社員採用”に近しいと思うのですが、人事だけが採用活動をやっても、会社のいいところを候補者に伝えきれないですよね。
あらゆる職能・立場の方が候補者と”面”で接することによって、エイチームグループの魅力や他社との違いについて実体験を通じて伝えられると考えています。

エイチームの人事は、会社や事業部のみんなが、出会いたい人(採用候補者)と出会える環境・仕組みづくり、採用が自走する状態をつくることが役割です。

社員全員を採用活動に巻き込む上で課題はありましたか?

「みんなで採用」という文化はもとから根付いていました。

ただ、新卒・中途入社ともに毎年多くの社員を採用しており、現在1000名の壁を超すところなんです。新しい面接官やリクルーターも増えるので、その文化を継承する土台作りは引き続き強化していかないといけないですね。

また、社員に協力してもらうときには、採用担当者と現場社員、お互いがwin-winな関係になるように意識しています。両者の目的は共に「会社の成長に必要な人材を一緒に採用していくこと」です。目的達成に向けて、それぞれの役割を担います。

どうやったらその文化が根付くのでしょうか?

やはり、根本にあるのは会社の経営理念です。
経営理念は、毎週月曜日に全社員が参加する「全体ミーティング」や各事業部のミーティング、上司やメンバーなどのコミュニケーションで頻繁に話題があがっています。

「みんなで幸せになれる会社にすること」はどのような状態なのか。「みんなで」の定義とは何か。幸せの定義を達成するためには、事業やサービスはどのような状態になければいけないのか。「今から100年続く会社にすること」という、「今から」を実現させるためには、サービスをどのようにスケールさせなければいけないのか、永続的に続く会社にするため、なぜ我々は新規事業に力を入れなければいけないのか。

…因数分解をしていくと、いいサービスを生み出し、成長させていくためには、「優秀な人」が必要になります。だから、各事業部の方々がそれぞれ、人材の採用、定着、成長を考えているんです。

採用に協力的な文化があるのは、経営理念を本質的に理解し、その会社や事業にコミットしているというのが大きいんじゃないかなと思います。
社員一人ひとりが「エイチーム」という「船」に乗っている、信頼しあう仲間と同じ目標(方向)を向いているようなイメージです。

インターナルブランディングが全ての循環を生む

経営理念がしっかり浸透していることを感じました。では、リファラル採用において、インターナルブランディングを重視されている理由はなんですか?

そもそもなぜリファラル採用が発生するかと考えたときに、その本人が会社に対するロイヤルティが高いことが大事だと考えています。「リファラル採用」は、クチコミを利用したマーケティング手法である「リファラルマーケティング」の考え方を、採用活動に応用した採用手法です。いいものは人に勧めたくなりますよね?第三者による「クチコミ」は、信頼性の高いエビデンスとなります。

結局本人がその会社や一緒に働く仲間が好き、サービスや事業が好き、だから友達に勧めたいとなる、と思うんですね。

そのために、社員がもっと会社を好きになる、正しく理解する、ひいては正しく理解した上でちゃんと上手に発信できる状態にする仕組みを作る必要があると考えています。

なるほど。

ただ、リファラル採用に限らず、インターナルブランディングは「情報が循環する」からすごく大切なんですよね。
例えば、社員が正しくエイチームを理解することができれば、面接官やリクルーターとしても正しく発信することができるし、新しく入社した人の研修や教育もできる。

こうして社内でインターナルブランディングの成果が循環することによって、社外に発信していく上での情報源になってきます。

社員が正しく理解して発信する仕組みづくりのために、どんなことをしているのでしょうか?

インターナルブランディングのステップとしては、「認知→理解・共感→浸透」を意識しています。

まずは「認知」の部分、社内情報共有に力を入れています。毎週月曜日に全社員が参加する「全体ミーティング」を実施しています。全社の売上・利益や経営状況、各子会社のサービスの取り組みやノウハウ・事例等を共有しています。

あとは各事業部や職能別、職能横断など、定期的にあらゆる単位でミーティングをしています。また、カジュアルに相談ができるように社内のいたるところにワイガヤゾーン(気軽にコミュニケーションを図るのに最適なミーティングスペース)があって、そこで様々なコミュニケーションも取っています。

これらの中で、「我々の事業やサービスを成長させていくにはどうすればいいのか?」など、主語を使ったコミュニケーションが多いので、経営理念を認知するきっかけが多いのかなと思います。

理解・共感・浸透の部分はどうでしょう?

インプットとアウトプットの繰り返しが基本だと思うので、お客様への発信や社内報告、採用活動など、コミュニケーションの量・質を高めることで理解・共感も深まっていくと考えています。
浸透における施策はまだまだこれからですが、全社的な表彰制度や育成研修など、今後構築していきます。


中途採用の1割がリファラル採用に。自社理解を促すことが最も大事

続いて、リファラル採用とインターナルブランディング、どちらも重要だけど、どちらから始めればいいのか?といった悩みをよく聞きます。エイチームではどちらから取り組みましたか?

エイチームでは、リファラル採用の制度導入は2010年ごろ、本格的にリファラル採用に取り組み始めたのは、2015年あたりからです。その後インターナルブランディングに注力し始めたのは後期です。
リファラル採用初期の頃は制度を整えてから発信やイベントなど、とにかく施策を回していたんです。でも、どれだけ発信しても施策を回しても、一定以上は紹介数が増えなかったんですよね。

そこで理由を考えたときに、小さな課題はいろいろあるけれど、そもそも「社員がエイチームを正しく理解するきっかけが少ないから、表に自信を持って発信できない」ことが根本の課題じゃないかと。

だとしたら、リファラル採用を促進すると同時に、短期的に採用関連の告知をするよりも、まずは社内に向けて「会社の情報」を発信することに重点を切り替えました。

エイチームを正しく理解することを優先したんですね。

はい。インターナルブランディングの活動にもつながるのですが、リファラル採用の促進をきっかけに会社に関する情報を社内発信することに注力しました。

具体的には、まず採用候補者向けに出している採用コラムを社員に読んでもらうため、エイチームのFacebookとTwitterをフォローしてもらうようにしました。SNSをフォローしてもらうために、社員食堂の壁に貼り紙や置き紙をしたり、社内メールを送る時に署名の部分にSNSフォローのお願いを入れたり。

そして、社内外のコミュニケーションで使用するツールを、2軸4象限でカテゴライズしています。情報の種類を「採用に直結するする情報」と「採用以外の会社全般の情報」と、採用への直結性によって分けています。また、情報の持ち方を「ストック型(蓄積)」と「情報の速報型」に分類し、情報の種類や特性に応じて、適切な方法で情報を届けます。元々は、社外向けのマーケティングを社内向けのコミュニケーションに応用をしました。

※イメージ画像(TalentX作成)

リファラル採用というと、今の空いている求人情報だけ発信する人もいますよね。

イベントやこういう募集してますっていくらアプローチしても、今目の前に紹介できそうなペルソナがいなければ、情報としてあんまり機能しないんですよね。
「車のディーラーで働いているAくんがうちに合いそう!」と思ったときに、なんの仕事があるかはもっと先の情報であると思っていて。まずは会社そのものを好きになってもらうことを考えるべきだと。

ある程度友人を紹介したい気持ちが高まったら、「プロセス」や「どういう仕事があるか」は人事に聞いてくれるだろうと思っています(笑)。本当は全ての情報が綺麗に整備されているのが望ましいんですが、まずは職種の情報じゃなくて会社に関する情報を理解して、発信の担い手になってもらうことですね。

いい取り組みですね。直近のリファラル採用の成果はどうなりましたか?

そうですね、年々紹介数は増えてきています。5年前は紹介数が20-30人だったのが、直近80人くらいまで数が増えました。応募から内定までの決定率は約3割くらいなので、昨年実績で27名入社が決まっています。中途の採用チャネルで1割がリファラルで入社されている状況です。

リファラル採用は企業文化作りの一つ

今後力を入れて行きたいことを教えてください。

人事広報として、採用業務を担う人材開発グループと一緒にリファラルの仕組みを回すことに取り組みながら、社内の情報共有とインターナルブランディングの構築は、これから1・2年かけてしっかりとやっていきたいと思っています。

一つの施策が独立して成功することはないと思うので、人材開発グループの施策や、社外への発信力の醸成、その前段階で会社を正しく理解する施策、ロイヤルティを上げるための社内広報活動にも力を入れていきます。全ての複合的な施策を、単一施策ではなく連携させながらやっていくことがとても大切なのかなと思っています。

最後に、リファラル採用やインターナルブランディングを促進したいと思っている方々にメッセージをお願いします。

リファラル採用は「企業文化作り」だと思うことが大切だと思います。

1週間、1ヶ月やったところですぐに文化が根付くわけでもないし、認知、理解・共感、浸透が本当の意味で進むのはものすごく時間がかかります。

何度も何度も循環させながら、縦横斜めのコミュニケーションの質と量を増やすしかなし得ない。「これは人事がやる、これは広報がやる」ではなく、人事・広報が仕組みを作って全社がちゃんと自走するような循環する仕組みを作ることが大事だと思っています。

編集後記

安藤さんのお話を聞いて、社員が会社を理解すること(インターナルブランディング)と、社員が会社を発信すること(リファラル採用)には深い関係性があり“循環する”ものだと分かりました。

社員の方々が自分事として「どうやってサービスを成長させていくか?」を考えていると同時に、安藤さんも「どうやって組織全体を成長させていくか?」を追求されている。「みんなで幸せになれる会社にすること」の理念が本質的に理解されていることが感じられました。

インターナルブランディングもリファラル採用も簡単に成果が出るものではないですが、強い想いをもってコミュニケーションを重ねていくことが成功につながっていくのでしょう。

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