競合同士が対談!?「リファラル採用」の全貌を明かす~ MyReferとGLOVER Referのリーダーが語る市場形成から未来まで~【前編】

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MyReferとGLOVER Referリファラル採用の全貌を明かすスペシャル対談今回は、リクルートキャリアの髙森氏とHARES西村氏をお迎えし、リファラル採用の全貌を明かすスペシャル対談を前編・後編に分けてお送りします。

MyRefer、Glover Referは2015年よりリファラル採用の概念を啓蒙し、ともに新しい採用市場を創ってきました。4年前からどのようにリファラル採用が広まってきて、これから日本でリファラル採用はどのように広まっていくのでしょうか?

西村氏にモデレーターを務めていただき、国内トップのリファラル採用活性化クラウドサービスを提供している、MyRefer(マイリファー)代表の鈴木とGLOVER Refer(グラバー・リファー)責任者の髙森氏にリファラル採用の全貌を語っていただきました。

対談者紹介

  • 株式会社リクルートキャリア 事業開発室インキュベーション部 リファラルグループマネジャー髙森 純 氏

    アクセンチュアを経て2012年リクルートキャリアへ。以降、グローバル人事、ピープルアナリティクス、Onboarding、リファラル採用などのHR領域の新規事業開発をプロデューサー、マネージャーとして手がける。キャリアを通して、個人や組織が持てる可能性を最大化できるようにするための仕掛けづくりを一貫して行ってきた。GLOVER Referでは、リファラル採用が“うまくいく・うまくなる”を大事に、サービスとコンサルティングサービスを提供しています。

  • 株式会社MyRefer 代表取締役社長CEO鈴木 貴史

    新卒で株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。ITネット業界を中心に企業の採用を支援した後、社長直下にて新規事業企画に従事。 2014年、グループ歴代最年少で社内ベンチャー制度「0to1」を通過し、1億円の社内出資の元国内初のリファラルリクルーティング事業 MyReferを立ち上げる。9カ月で黒字化を実現し事業拡大。 18年、事業譲渡によりMBOを経て完全独立。パーソル初となるスピンアウトベンチャー株式会社MyReferを設立、代表取締役社長に就任。MyReferでは、リファラル採用を軸に、アルムナイ採用、タレントプールなど“企業を取り巻く全員をファンにする”をコンセプトに事業を展開。

  • 株式会社HARES 代表/HRマーケター西村 創一朗 氏

    2011年に新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・人事採用を歴任。本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、2017年1月に独立。独立後は複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業向けにコンサルティングを行う。講演・セミナー実績多数。プライベートでは10歳長男、6歳次男、2歳長女の3児の父、NPO法人ファザーリングジャパンにて最年少理事を務める。

目次

<前編>

2015年サービス開始から4年たった今、リファラル採用の市場は想定以下?想定以上?

西村氏:
今回対談企画のモデレーターを務めます、元GLOVER Refer/現在HARES代表の西村です。さて、今回は「リファラル採用」という言葉がなかった時代からリファラル採用の市場を創ってきた二社にお越しいただきました。
2015年にサービスが始まってから4年立ちましたが、4年前の想定と比べて、リファラル採用は広まっているのでしょうか?それとも、広まっていないのでしょうか?

髙森氏:
実は、私自身がGLOVER Referを担当したのは去年からなんです。実際に携わってみて「現状は、まだまだ広まりつつある段階だ」と思いました。
世の中にこれだけたくさんの会社がある中で、他のHRテックサービスと比べると、まだまだ支援しきれていない企業があるなと。

ただ、流れが変わり始めているのは感じています。
2,3年前だとサービスを使わなかっただろう企業が検討し始めている。アーリーアダプターだけではなくトラディショナルな会社にも浸透してきていると思います。

鈴木:
4年前の想定と比べると、大体想定通りですね。
HRテックの事業開発をおこないながら、様々な競合調査や海外のリファラル採用事例を見てきたので、「日本においては、リファラル採用はなかなかスピーディに浸透しにくいだろう」と思っていました。

日本は法人と個人双方の文化が特殊です。
法人でいうと、外部エージェントの便利なサービスによって採用力の外部化が進んでいたため、そもそも人事が社員をまきこんで採用する概念がありません。なので、2014年の時点でリファラル採用を実施する企業の割合は、アメリカが85%に対して日本が20%でした。
また個人でいうと、終身雇用・年功序列の慣例にのっとり、転職はリスクでありひっそりと進めるものだという文化があります。
このような文化が前提にあるので、一気にものすごく伸びるとは予想していなかったんです。HRテックサービスの中でも、ATSのように既存の作業を効率化するだけでなく、リファラル採用は文化を変えなければならないので。

ただ、髙森さんのおっしゃる通り、ここ1,2年で明らかに導入企業や問合せが増えてきているので、変化の兆しは感じています。

西村氏:
リファラル採用は文化を変えなければならない。そんな中、これまで検討していなかった企業が導入するように変化が起こりはじめている背景はどんなところにあるのでしょうか?髙森氏:
弊社の調査結果から、二つ考えられると思っています。
一つ目は「採れない」。現在、4割ほどの企業が中途採用計画未達成だと回答されています。とくに流通・小売・外食業界や地方企業はそれが顕著になっていると。
二つ目は「採用コストを下げたい」。近年求人倍率が上がって、求人広告媒体や人材紹介にかけるコストが増加していることが考えられます。

西村氏:
なるほど。「採れない」「採用コストを下げたい」という課題は以前からあると思うのですが、なぜ今なのでしょう?

鈴木:
エンゲージメント市場の広がり」が背景にあると思います。
採用コストを下げたい、離職を減らしたい、生産性を上げたい……これらはエンゲージメント文脈で全て包括されるものですよね。
企業からも、リファラル採用で母集団形成だけしたいというより「社員がおすすめする会社にしたい」とエンゲージメントを含めた相談が増えているんです。

その背景にあるのは、個人の働き方が多様化していることじゃないかなと。
ワークライフバランスの境目がなくなったり、組織に所属するのではなくプロジェクト型で参画したり、西村さんのように副業・複業する人が増えてきていたり……「個人はずっと一つの企業に従属して仕事をするものだ」という働き方の概念が変わってきました。
だからこそ、企業がより個人・社員のエンゲージメントを高めることに目を向けなければいけません。

西村氏:
リファラル採用は社員のエンゲージメントを向上させて、おすすめしたい会社を創ることが大前提だからこそ、今の時代に求められているのかもしれませんね。

リファラル採用がうまくいく会社とうまくいかない会社……その違いとは?

西村氏:
これまで4年間、MyReferやGLOVER Referを通じて企業のリファラル採用の成功を支援されてきたと思うんですが、その中でリファラル採用がうまくいく会社とそうでない会社にどんな違いがあるのでしょうか?

鈴木:
両者の一番大きな違いは、人事が社員を巻き込めているかどうかではないでしょうか。
前提として、会社が社員のエンゲージメントを高めることができているかは重要です。リファラル採用を「なぜやるか?」をしっかり定義した上で経営陣が賛同している状態であること。

さらに現場レベルに分解すると、社員と人事の二軸があると思います。
社員軸でいうと、ロイヤルティが高いこと、一定のソーシャルリテラシーがあることが必要です。人事軸でいうと社員を「巻き込む力」があることがうまくいくための基準として挙げられますね。例えば、大手のとある業界ではでは現場が強すぎて、人事からなかなか巻き込めないこともありました。

髙森氏:
弊社が社員と人事にリファラル採用について調査した結果からいうと、社員は「経営情報がオープンになっているかが重要」だと答えています。
会社がいいも悪いも含めてオープンにしているか。「風通しの良さ」はリファラル採用を成功に導く上で、とても重要です。

鈴木:
たしかに「風通しのよさ」がないことで、現場社員を巻き込む上での人事の負荷が高くなり、なかなかうまくいかないこともあると思います。結構現場と人事で課題認識のズレがあるんですよね。人事の方が「うちの社員友達いないから」、「うちの社員ロイヤリティ低いから」と言ってるけど、実は一定数の社員はロイヤルティをもって会社をおすすめすることもありますし。

西村氏:
なるほど。「風通しのいい会社」は人事起点でどうやって作っていけるのでしょうか?

髙森氏:
いきなり会社全体を変えるというよりも、採用の立場でできることからオープンにしていければいいと思います。例えば、大企業は自社の採用ポジションを社員に積極的には知らせていないことが多いですよね。空きポジションがあっても社員が自由に異動できないから、ということもあると思いますが……。
採用の情報って思ったよりも社内に認知・流通されていないものなので、「このポジションを採用していく、こういう人が採用できた、まだ採用できてない」のように目標や結果を開示していくコミュニケーションはまず重要だと思いますね。

鈴木:
広報PRを巻き込むことも一つだと思いますね。インターナルブランディングを進めつつも、人事としては結局採用KPIを追わなきゃいけないので。となると、社内広報を巻き込んで、社内に経営情報や福利厚生制度の情報を流すこと。
例えば、不動産の会社でほぼ知られていなかった「結婚インセンティブ」の制度を配信すると、「うちってこんな制度もあって、社員のプライベートも大切にしてくれる会社なんだ」と分かり友人を誘いやすくなったという話もあります。 PR を巻き込んでインターナルブランディングをしていくのが大事かなと。

あとは、極論ハイアリングマネージャーを現場に置くのが早いですね。採用の情報が流通しないのは結局人事だけでやってしまっているからですよね。その責任自体を現場にミッションとして落としたら、採用情報を開示させざるを得ないので。

続きは、【後編】にて!
リファラル採用活性化ツールの価値や、リファラル採用が広がる先の世界観についてお話します。