戦略人事とは?導入に必要な機能や流れを解説

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目次

  • 戦略人事とは?
  • 戦略人事と経営戦略との関係性
  • 戦略人事と人事戦略の違い
  • 戦略人事に必要な4つの機能
  • 戦略人事導入のメリット
  • 戦略人事の導入が難しい背景
  • 戦略人事を成功させるためのポイント
  • 戦略人事の実現方法
  • 戦略の加速にリファラル採用の選択を

これまで管理業務を行ってきた人事部は、単なる労務管理などのオペレーション業務から、事業戦略を力強く推進する役割へと変化していくことが求められています。

そんな中注目されている「戦略人事」という言葉は1990年代にアメリカの経済学者デイブ・ウルリッチ氏が提唱した、人事部を管理業務に留まらず経営者のビジネスパートナーとして位置付ける考え方の事で、欧米の先進企業を中心に導入・実践が進んでいます。

働き方改革やダイバーシティなど多様な働き方を求める社員への対応下において今注目されてきている戦略人事について、こちらの記事では基本的な概要・役割から成功のための必要要件までご紹介致します。

戦略人事とは?

戦略人事とは、戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)の略称のことであり、経営戦略に深く関わりその実現に寄与する人事のことを言います。経営戦略を実現するために、4つの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)から「ヒト」(人的資源)にフォーカスしたものになります。

従来の人事では、人事施策が自社の「経営目標」や「経営計画」の達成に直接紐づけられることは原則ありませんでしたが、「戦略人事」では、人事部門が経営トップのパートナーとして、経営戦略に積極的に参画し、人材や組織を最大限に活用して、「経営目標」や「経営計画」の達成を遂行していくことになります。

戦略人事と経営戦略との関係性

経営には「戦略」「戦術」「戦力」「環境」の4つの要素が必要になりますが、戦略・戦術が優れていても、それらを遂行する戦力(従業員)と、その戦力が活躍できる環境(組織文化、働く環境など)が整っていなければ、経営戦略・戦術を実現することはできません。この「戦力・環境」の整備を担うのが、「戦略人事」であり、現在の企業経営において非常に重要なものになっています。

戦略人事と人事戦略の違い

人事戦略とは、採用や教育など人事業務に関する業務改革を意味します。
人事戦略はあくまで人事業務のアップデートが目的であり、事業目標の達成の成否に直接的には関わりません。例えば、活躍人材の採用のために新しい採用手法を導入したり、社内教育プログラムを刷新したり、などの取り組みが該当します。
一方で戦略人事では、経営目標、事業目標を達成するための人材獲得や環境整備を担います。戦略人事と人事戦略はどちらも経営資源である「ヒト」に関わる取り組みですが、異なる点として経営目標、事業目標達成へ関わるかどうか?が異なります。

経営目標、事業目標を達成するためには優秀な人材の獲得が必要不可欠ですが、採用手法を模索する前に求職者のニーズや競合他社の特徴や強み・弱みを分析し、そのうえで、自社のUSP(Unique Selling Proposition)を割り出していくことがポイントになります。
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戦略人事に必要な4つの機能

ウルリッチ氏は、戦略人事を実現するには次の4つの要素が重要であると説きました。

HRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)

HRBPは経営戦略、事業戦略に沿った人材を把握するため、経営陣やリーダー、そして各部署の従業員へヒアリングをしながら、各事業の人的なリクエストに応え、言語化できていない課題を引き出し解決します。人事部以外の様々な部署との関わりが多く、従業員の理解者として相談役の役割も持ちます。

経営と現場の間に入り、人的資源について様々なニーズに対応し、問題解決に向き合うことによって、経営戦略を実現するための人材や組織を作り上げる重要な機能です。

▼採用戦略のポイントは?
https://mytalent.jp/lab/s_recruitment_strategy/

OD&TD(組織開発&タレント開発)

OD&TDは、社内の文化や風土を改善し、経営理念を浸透させるOD(Organization Development, 組織開発)と経営幹部など理想的な組織に必要な人材の育成を行うTD(Talent Development, タレント開発)という2つの仕組みから成り立ちます。

理想的な組織に向かって、企業文化の醸成や組織の方向性を決定し進むべき方向へ導く組織開発を行うODと、必要な人材の育成を行うTDは表裏一体であり、OD&TDとして必須の機能です。

CoE(センターオブエクセレンス)

既存の仕組みや社内に向けた取り組みを行うOD&TDに対し、新しい仕組みや外部に向けた取り組みを行うのがCoEです。人事に関わる専門領域の中心となる人事機能を指し、採用や制度、研修など各分野における専門家から構成されます。

戦略人事の中心的な機能であり、採用や処遇、能力開発といった人事に関係する様々な制度・仕組みの設計や全体的なKPIの管理などを行います。

OPs(オペレーションズ)

OPs はCoEが設計し構築した各種ソリューションを、実際に運用管理していく実務のポジションです。社員の採用や給与計算、勤怠管理といった労務を統括し、必要に応じてアウトソーシングの管理や推進も行います。

なお、正社員採用が前提という昔ながらの社風の企業であっても、人手不足が顕著になっていることから、派遣や非正規を含めた幅広い形態による採用を実施するケースが増加しています。

戦略人事導入のメリット

戦略人事にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

経営へのインパクト

経営戦略に直結した人事施策による経営へのインパクトが第一に考えられます。
個々の能力向上やマインドセットの改革、組織文化の醸成や人員構成の最適化など、本来多くの時間がかかってしまう部分について、経営に直結した施策を打つことでスピーディーかつクリティカルに成果が反映されるでしょう。売上のUPや生産性の向上など、経営に関するさまざまな点にメリットを与えることが期待できます。

エンゲージメント向上や離職率の低下

戦略人事によって従業員のエンゲージメント向上や離職率低下など副次的効果も期待できます。
経営にインパクトのある戦略人事を実施することによって、現場で働いている従業員にとっては会社への貢献ややりがいを感じやすくなり、エンゲージメント向上を期待することができます。

戦略人事の導入が難しい背景

戦略人事の導入が進まない背景とは、一体どのようなものなのでしょうか。
それは、日本古来から根付く「終身雇用」や「年功序列」などの制度が影響しています。
従来の日本企業では従業員の安定と引き換えに、定年退職まで従業員を雇用し、年齢に合わせて役職を昇格させることが普通でした。このような仕組みに沿って、これまで企業の人事も採用や人員異動を運用してきたのです。

しかし、これでは企業の経営戦略に沿った戦略人事を行うことが難しいと考えられています。戦略人事は会社の業績を上げるための企業戦略に合わせて人事配置や人材マネジメントを行う手法なので、企業の戦略が打ち出されるとともに内容も変化していきます。これまで日本に根付いている制度は、あくまで「人」に合わせた人事制度であり、会社の経営に沿った目まぐるしい変化に対応することは難しいとされています。
少子高齢化による働き手不足、さらにコロナ禍で業務効率化が求められている現代において、これまで日本に根付いている制度では戦略人事を実行することは難しいと考えられるでしょう。

戦略人事を成功させるためのポイント

戦略人事は経営戦略に深くコミットするため、経営陣の考えと人事担当者の認識を詳細まですり合わせる必要があります。

具体例として、経営陣は、企業理念、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)から中期経営計画と一貫性のあるものを人事担当者に提言する必要があり、人事担当者は経営陣からの提言を受け取り経営の上段部分から深く理解をした中で、求める人物像を定義したりと戦略人事へ落とし込む必要があります。

このように、経営陣と人事担当者という双方が互いに協力して認識の齟齬がない状態で進めることが戦略人事にとって非常に重要です。


MVVやクレドに関する記事はこちらから

戦略人事の実現方法

上記必要要件の「企業理念→MVV→中長期経営計画→短期経営戦略」を一貫して理解した上で、

①HRBPがヒアリングを行い、上記を達成するときにどのような組織の状態である必要があるかを逆算
②OD&TDが①のために社内風土をどう改革し、社員をどう育成するか計画
③CoEが②のために必要な制度整備や育成で賄えないポストの採用を計画
④Opsがそれらを実行、完遂

という順番で戦略を実行していくことが望ましい状態です。

戦略の加速にリファラル採用の選択を

戦略人事を遂行していくうえで企業の人事担当者は従来の守る人事の発想を捨て、経営戦略に直接関わっていく姿勢が求められます。また、経営陣はこういった戦略人事を進め、整備し、人事を経営のパートナーとして認め育てていくことで、競合他社との差別化・優位性を人事面で構築することができます。

経営上の課題に対して、再現性の高い人事戦略を実行するために、リファラル採用を一つの戦術として取り入れることも有効です。リファラル採用は、企業の理念やバリューの浸透、従業員のエンゲージメント向上、リテンションの改善、採用コストの削減など、企業のカルチャーを作り、伝播し、求める人材を採用する方法として注目されています。

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