OJTとは?意味や導入のメリット・デメリット、効果的に進めるポイントを解説

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目次

  • OJTとは?その意味は?
  • OJTのメリット
  • OJTのデメリット・よくある課題
  • OJTを進める上でおさえておきたいポイント
  • OJTの具体的な進め方
  • OJTを充実させ企業成長につなげよう

OJTとは「On the Job Training」の 略で、新人社員を育成する方法の一つとして多くの企業に取り入れられています。
本記事では、OJTの意味と導入するメリット・デメリットを整理しながら、OJTを導入する上でよくある課題を確認し、おさえておきたいポイントと具体的な進め方、効果的な導入について解説します。

OJTとは?その意味は?

OJT(On the Job Training)の概要

「OJT」とは「On the Job Training」の略で、現場での実務を通じて業務の知識や技術を身につける育成手法のことをいいます。
実務経験のある上司や先輩社員が新人社員に対して、業務に必要なスキルやノウハウを実際の業務を通じて伝え・教えることであり、外部研修や資格取得等に比べ実際の業務の中で教育を行っていくので、より実践的なスキルやノウハウを伝授することができます。

OJTを企業の約6割が実施(2020年)

厚生労働省が2020年に発表した調査によると、計画的なOJTを実施した企業は59.4%で、およそ6割の企業がOJTを何かしらの形で取り入れています。

引用:令和2年度「能力開発基本調査」の結果(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_19368.html

OJTとOffJTとの違いとは?

実際の現場で実務を通して実施されるOJTに対して、OffJTは現場を離れて行われるセミナーや研修のことをいいます。
大きな違いは「実務か否か?」という部分です。その他、OffJTはセミナーや講習会など座学形式でインプットを中心に行われますが、OJTに関しては実務を通じてインプットとアウトプットの両方を進めていく点も大きな違いの一つでしょう。

OJTのメリット

OJTを導入する企業が多いとご紹介しましたが、OJTを行う上でどのようなメリットがあるのでしょうか?

メリット1:個人のレベルに合わせて育成を進められる

OJT(On the Job Training)のメリット1つ目は、個人のレベルに合わせて育成を進められることです。
外部のセミナーや研修では複数名の受講者に対して行われることが多く、個人のレベルに合わせてプログラムを進めていくことは困難です。
OJTでは新人社員に対して1:1で指導することが一般的であり、教わる側の理解度や習熟度に合わせて研修内容やプログラムの変更・修正をしながら進めることができます。

メリット2:即戦力化することができる

OJT(On the Job Training)のメリット2つ目は、新規入社者を即戦力化できることです。
外部のセミナーや研修では体系的に世の中の一般的なノウハウを学ぶことができますが、企業毎の解釈やローカルルールなどは反映されていないことが多いので、実戦に役立てるには時間がかかります。
OJTでは実務を通して指導を進めていくため、「研修内容≒実業務」であることが多くOJTを進めていく中で自然と仕事に関するノウハウや知見を貯めていくことができ、OJT終了後には即戦力として活躍することが期待できます。

メリット3:教える側もスキルアップできる

OJT(On the Job Training)のメリット3つ目は、教える側もスキルアップできることです。
OJTでは上司や先輩社員が指導者として教育を進めていきますので、教える側は新人社員が理解できるように改めてノウハウや考えを整理したり、分かりやすいアウトプットを考える機会が生まれます。
その結果、指導力、アウトプット力など、教える側にとってのスキルアップにつながることが期待できます。

メリット4:良い人間関係が構築できる

OJT(On the Job Training)のメリット4つ目は、OJTを通して良い人間関係を構築できることです。
OJTでは上司や先輩社員から新人社員に対して教育を行いますので、教育の中で生まれるやり取りを通じてコミュニケーション量が増えることが考えられます。
こうしたコミュニケーションを通じて徐々に信頼関係が生まれ新人社員やそれ以外の従業員とのコミュニケーション活性化や良い人間関係を構築できることが期待できます。

メリット5:コスト抑制

OJT(On the Job Training)のメリット5つ目は、コストを抑制できることです。
外部の研修やセミナーでは参加費用など外注するコストがかかってしまいますが、OJTでは社内の従業員同士による教育になりますので原則としてコストがかかることはありません。
企業にとっては研修費用がかからないもしくはコスト抑制できることがOJTのメリットの一つになるでしょう。

OJTのデメリット・よくある課題

OJTには多くのメリットがありますが、デメリットにはどのようなことが考えられるのでしょうか?

デメリット1:指導内容や習熟度がOJT担当者に依存する

OJT(On the Job Training)のデメリット1つ目は、指導内容や習熟度がOJT担当者に依存することです。
OJTでは上司・先輩社員と新人社員が1:1で実施することが一般的だと前述しましたが、1:1で行われることによって教える担当者のスキルや指導力によって指導内容や習熟度に大きな差が生まれてしまう可能性があります。
特に体系化されていない業務や個人の解釈によって異なる部分に関しては教える担当者に大きく依存しますので、教育のマニュアル整備など対策を行うことが求められます。

デメリット2:実務中心の教育になり体系的に学びづらい

OJT(On the Job Training)のデメリット2つ目は、OJTでは実務中心の教育になり体系的に学びづらいことです。
OJTでは実務を中心として教育内容になるため、ビジネスや業務の全体像を把握しながら進めることが難しく、一つ一つの作業ベースで実行する力はついていくものの、体系的に学びスキルやノウハウを身に着けていくのは難しい傾向にあります。
業務の全体像を把握したうえで個々人が担当している実業務を学び・推進していくためにもOffJTとOJTとうまく組み合わせて実施していくことが好ましいといえるでしょう。

デメリット3:OJT担当者の実務が滞る

OJT(On the Job Training)のデメリット3つ目は、OJT担当者の実務が滞ってしまうことです。
OJTでは上司や先輩社員が業務時間の中で新人社員に対して教育を行っていくため、教育に関する準備や指導の時間が割かれてしまうことによって、上司・先輩社員の実務にかけられる時間が減ってしまい業務が滞ってしまう可能性が考えられます。
教育マニュアルの配布やOJT担当者のタスク割り振りを再考するなど企業やチーム全体でサポートすることが求められます。

OJTを進める上でおさえておきたいポイント

OJTで生じやすい課題を理解し、それに対応するために以下のようなポイントをおさえておくといいでしょう。

人事と現場が連携し、指導体制を整える

OJTには人事・現場社員ともに大きな負荷がかかることが想定され、効率的に導入・推進していくためには、人事と現場の連携が必要不可欠だといえるでしょう。
前述のとおりOJT担当者の負荷軽減のためにタスク割り振りを再考したり、教育・研修をより良いものにするために、人事が中心となって行われるOffJTと、現場で行われるOJTをうまく連携させて双方の特性を生かしながら進めていくことが必要になります。

OJT担当者の選定

OJT担当者(トレーナー)を誰にするかということも、OJTの成果に大きな影響を与えます。成績が優秀な従業員がだれでも上手に教えられるとも限りませんし、新人社員(トレーニー)によっては、合う合わないなどの相性が大きく変わってくるでしょう。
教育者として誰が向いているのか?新人社員(トレーニー)との相性をかんがみて、最適な担当者の選定と組み合わせを模索していくことが必要になります。

OJTに向いている業務と向いていない業務を把握する

OJTはどんな業務でも万能に機能するものではありません。OJTを導入して成果を出しやすい業務と、そうではない業務の区別をしながらOJTの計画・導入を進めていくことが求められます。

OJTの具体的な進め方

OJTを導入していく場合、具体的にどのようなプロセスで進めていけばよいでしょうか?

①OJT研修の目的・目標を設定

OJTを通じて何を実現したいのか?なぜ行うのか?ゴール設定を行っていきます。企業の状況に合わせて中間目標やKGI・KPIの設定を行うことがより良いでしょう。
また、経営陣、人事、現場社員など各部門によっても求めるものは異なりますので、各部門の意見を踏襲しつつ最適な目的・目標を設定することが求められます。

②育成計画を作成する

OJTの目的・目標を設定したら具体的な育成計画を作成しましょう。
人事、現場担当者を中心に新人社員の育成計画を立て、どのくらいの期間をかけて行うのか?OJTとOffJTをどの段階で行うのか?どのような知識やスキルを身につけてもらうのか?など、中長期的に続くことが多いOJT研修のマイルストーンを作成しながら最終的なゴールに結び付けていきましょう。

③OJT担当者の選定基準作成

育成計画をもとに各現場に対してどの従業員がOJTに最適なのか選定基準を設けていきます。現場によって求められるスキルや新人社員によって求められる教育方法は変わってきますので、さまざまな状況に応じて選定基準を設けていきましょう。

④OJT担当者の選定

③の選定基準に沿って担当者を選定していきます。OJT担当者は新人社員への指導を行う分、既存業務の生産性は下がることになりますので、周囲からのバックアップが必要かどうか?必要であれば事前に協力要請をすることも必要になります。

⑤OJT実施

新人社員が現場に配属されOJTが実施されます。

⑥定期的に進捗を確認・指導方法や計画の修正

②の育成計画に対して定期的に進捗状況を確認しながら状況に応じて指導方法や計画を修正していきます。進捗状況やトレーナーとトレーニーの相性、現場担当者の負担状況などによってはOJT担当者の変更なども検討しましょう。

⑦フォローアップ研修を行う

必要に応じてフォローアップの研修を実施してもよいでしょう。OffJTのようなセミナーや研修を行い実務外のスキル・ノウハウに関する教育を行ったり、OJTで指導している内容をより体系的に教える場として活用してもよいでしょう。
また、人事部によるフォロー面談など第三者からの状況確認を定期的に行うことによって、進捗状況やトレーナー・トレーニーの負担状況などを的確に把握することができることが期待できます。

OJTを充実させ企業成長につなげよう

OJTは従業員一人ひとりの成長に密接にかかわっており、また、最終的には企業が継続的に成長できるかどうかといったところにまで大きく影響していきます。
現場社員に任せきりになってしまったり精度にばらつきのある企業様も多いのではないでしょうか?継続的な企業の発展を目指しこれを機会に「OJT」を見直してみてはいかがでしょうか。