人事異動の目的は?進め方・快諾してもらう伝え方のポイントなどを解説

更新

目次

  • 人事異動とは?
  • 人事異動の種類
  • 人事異動を行う目的は?
  • 人事異動のメリット・デメリット
  • 人事異動の進め方は?
  • 人事異動を快諾してもらうためのポイントとは?
  • 人事異動を拒否されたらどうすればいいのか?
  • 人事異動の情報漏洩を防ぐためには?
  • まとめ

人事異動は多くの企業で行われていますが、なぜ人事異動を行う必要があるのでしょうか?
本記事ではそんな人事異動の概要から人事異動の種類、メリット・デメリット、人事異動を快諾してもらうポイントについて解説していきます。

人事異動とは?

人事異動とは、企業の中で従業員の配置や地位、勤務条件などを変更することをいいます。

労働基準法などで明確に定義されているものはなく、あくまでも一般的な解釈についてここでは紹介しています。
多くの企業では事業戦略・組織戦略の変更に伴い年度末や決算に合わせて実施されることが多い傾向にあります。

人事異動の種類

大きく3つに分けられます。各項目をご紹介していきます。

人事異動

企業側が従業員に命じ、その配置や地位を変更する制度です。主に転勤・転籍・昇進といった、配置転換を意味します。

社内公募制度

企業が必要とするポストや職種などの条件を社員に通知し、希望者を募集したのち面談を行って人事異動を決定する制度です。主に新プロジェクトの発足時や、増員が必要な部署で実施されます。直属の上司に承認をもらう必要はなく、本人が直接人事部へ異動希望を申し出るのが一般的です。

社内FA制度

社員が自分の経歴、能力、実績、資格を希望部署にアピールし、自由に異動や転籍を希望できる制度です。社員のキャリアパスの実現や、社内人材の流動化の活性化が促されるというメリットがあります。また、応募者は数年後のキャリア形成を踏まえて異動希望を申請するため離職しにくく、企業は長期的な人材育成を実施できます。

人事異動の中でも、「社内公募制度」と「社内FA制度」のように社員の希望に沿って行われるものを、インターナルモビリティと言います。

下記記事ではそんなインターナルモビリティの概要からメリット・デメリット、導入する際の注意点について解説しています。インターナルモビリティの制度導入を検討している方は是非ご覧ください。

グローバルな人材と企業を育てる!
インターナルモビリティの重要性

人事異動を行う目的は?

目的①:人材の最適配置

従業員個々の能力やノウハウ、強み・弱みに合わせて人材の最適配置をすることによって組織のパフォーマンスを向上させることが期待できます。
企業や部署毎など、各組織に必要な人材を採用することも可能ですが、人材不足である昨今において、既存従業員のパフォーマンスをいかに最大化するか?が非常に重要になっており、人事異動における目的のひとつになっています。

タレントマネジメントなど人材配置や人材育成に関する新たな仕組みや考え方が近年注目されています。

タレントマネジメントとは?導入効果や手順を図解で分かりやすく解説

目的②:人材育成

目先の効果や組織効率ではなく、従業員の人材育成のために人事異動を行う場合もあります。さまざまな企業や部署で実務の経験を積ませることで幅広いスキルやノウハウを身に着け企業の将来に必要な人材を、実務を通して育成することができます。

幹部候補の育成や部署間の垣根を払うためなど、さまざまな理由がありますが、企業が目指す中長期的な目標に向けて人事異動による人材育成は必要不可欠だといえるでしょう。

目的③:組織の活性化

組織内で長年同じメンバーで作業を行っていると、業務がマンネリ化され新しいアイデアや変革が生まれにくい状況になってしまいます。
そんな組織において、人事異動を通して新たな人材を投入することで組織の新陳代謝を図っていくことができます。

人事異動のメリット・デメリット

人事異動のメリット

企業側のメリット
人事異動による企業側のメリットは、組織の活性化や従業員の最適配置による生産性の向上、従業員育成による中長期的な組織力の向上などが当てはまります。
目先のメリットも多くありますが、中長期的なメリットも多くあり、企業は継続的な発展に向けて事業戦略とともに人事異動含むHR戦略に取り組んでいかなければならないといえるでしょう。

従業員側のメリット
人事異動による従業員側のメリットは、幅広い職種やポジションを経験することによるスキルアップやノウハウの獲得、個々人が思い描くキャリアプランの実現です。
終身雇用が崩壊しつつある昨今転職によるスキルアップやキャリアプランの実現を図ることが一般的になってきましたが、目的達成のための手段として転職だけでなく、人事異動を活用した社内での配置転換も非常に重要だといえるでしょう。
また、社内でキャリアアップができることがわかれば既存従業員の離職防止・定着率UPにつながることが期待できます。

人事異動のデメリット

企業側のデメリット
人事異動による企業側のデメリットは、異動による引継ぎ作業発生による業務圧迫や、望まない人事異動による従業員のモチベーション低下やそれに伴う離職の発生などがあげられるでしょう。

従業員側のデメリット
人事異動による従業員側のデメリットは、頻繁な異動による専門性の低下や、新しい業務や環境に慣れるための工数やストレス、新しい部署のメンバーや取引先といったステークホルダーとの新たな関係構築が必要な点があげられます。
特に新たな環境の上司・上長と仕事の価値観や考え方があっているかどうか?また、相手の考えを理解するまでには時間がかかり相当のストレスがかかることが考えられます。
従業員はそういったリスクがあることも踏まえて人事異動をする必要があるでしょう。

人事異動の進め方は?

人事異動を実施するにあたりどのような手順で実施すればよいのでしょうか?
時系列に沿ってわかりやすく解説していきます。

ステップ①:各組織の実態調査・ヒアリング

各部門の責任者と話し合い、事業目標に対して組織に必要な人数や、どのような人材が足りていないのか情報収集を行いましょう。
なお、その際、該当部署ではどのようなスキルやバックグラウンドを持った人物が該当部署に必要なのかをイメージできるよう、詳細にヒアリングすることが重要です。異動を考える際に明確なペルソナをイメージできるように進めましょう。

ステップ②:必要なスキルや素養など要件の洗い出し

必要なポジションが明確になったところで、どのような人材であれば、経営計画、部署のプロジェクト、職務を全うできるのか要件を定義しましょう。
プロジェクトの中で任される業務はなにか、どのようなスキルが必要となるのか、どのようなバックグラウンドを持った人物であれば業務を遂行できるのかなど、各ポジションに応じて必要な人材の特徴を洗い出していきます。

ステップ③:候補者のリストアップ・決定

ステップ①ステップ②が完了したところで、従業員側の異動希望情報も収集しつつ候補者をリストアップしましょう。経営計画や事業計画に沿った人事異動を行うため、部署の実態調査を進めながら従業員側の意向も収集していきます。
その際、各組織の今後の見通しを見越したうえで、定めたペルソナに沿う人物を候補に挙げることが重要です。候補者の洗い出しが終わったら、人事部から候補者の上司と異動先の責任者に対し説明を行い、双方の了承を得ましょう。

ステップ④:内示

内示とは、正式な辞令を交付する前に、該当する候補者に対して通知を行うことを指します。候補者に対しては、直属の上司から異動先や業務内容、異動目的や時期を面談などで打診してもらいます。
人事異動において従業員とのトラブルを防ぐためには、候補者への丁寧な説明と理解が重要です。なお、内示した際に候補者から強い反対意向があれば、候補者の再調整や別途キャリア面談などの対応をしましょう。

ステップ⑤:辞令

辞令とは、昇給や昇進、転勤を命じるときに渡す文書のことをいいます。異動対象者に対し、部署や勤務地、職務などを記載した辞令を交付します。また、社内システムや掲示板などで、人事異動の通知を掲載する企業もあります。

ステップ⑥:異動後のフォロー

人事異動後は、従業員も新しい環境に飛び込むことになります。異動対象者にとって人事異動がネガティブなものになってしまうと、エンゲージメントの低下や離職率の上昇につながってしまいますので、フォロー環境や、異動者が活躍できる環境を整えておきましょう。
これまでどんなキャリアを積み、なにが得意なのかを現場に伝えたり、新たな業務内容に馴染みやすいよう制度を整えたり、対策を講じましょう。

人事異動を快諾してもらうためのポイントとは?

異動の目的を候補者が納得できるように具体的に伝える

人事異動は、会社の事業戦略が従業員にとって「自分ゴト」として捉えられた状態で行うことが理想です。そのために、どの部署でどのような人材が必要で、会社として何を目指していくのか、そのためにどのような力を活かしてもらいたいのか、など、経営目標から個人まで落とし込んだ内容を候補者に伝える必要があります。

現場にも事前に十分なヒアリングを行う

人事異動の際は、候補者の声だけでなく、異動先の部署の声を聞くことも重要です。新しい人員を受け入れ、教育や実務などを異動者に伝えていくのは現場です。企業の本部だけでは、現場の本音や実情を把握しきれないこともあります。理解が及んでいないまま異動を進めてしまうと異動者も現場も、双方に不幸な結果を招いてしまうこともあるでしょう。そのため、異動を進める前に、受け入れ側のニーズや、現場でどのような人物が欲しいのか、現場の意見も聞くようにしましょう。

人事異動を拒否されたらどうすればいいのか?

会社が従業員に人事異動を命じても、拒否をされる可能性も少なからずあるでしょう。その際、会社としては、明確な法的根拠を示したうえで理解してもらうことが必要です。
就業規則などで人事異動を命じる権利が会社に定められている場合は、従業員に正当な理由が無い限りは、会社が行った人事異動に関する命令を拒否することができません。
しかし、人事異動が原因で会社を退職してしまう事態は、会社にとっても優秀な人材を逃すきっかけとなってしまい、大きな損失となってしまいます。

人事異動を拒否された場合は、社員が人事異動を拒否している理由などを明確にし、事情によっては人事異動を別の人材に変更するなども検討しましょう。また、異動をすることにより待遇の見直しを行ったりするのも、社員の抵抗感を軽減するポイントです。社員のケアをしつつ、社内人事を行っていくことが重要です。

人事異動の情報漏洩を防ぐためには?

人事異動による情報漏洩を防ぐために、どのような点に気を付けなければならないのでしょうか?
それは、内示から辞令までのルールを徹底することです。
内示から辞令までのフロー設定や、内示を外部に漏らさない期間設定、具体的な内示方法など、異動の際に発生するフロー一つ一つに関してルール決めが必要です。ルールをきちんと定め、社員に通知していないと、社員もなにが善悪なのかが分からず、知らない間に誤った行動をしてしまいます。
また、漏洩はコンプライアンスリスクがあるということも同時に周知しましょう。社内で重要なポジションの人事異動であればあるほど、外部漏洩などによって株価暴落などのリスクが発生してしまい、全社に影響を与えかねません。そのため、ルールの一つ一つを社員に正しく通知し理解をさせることが必要です。

まとめ

本記事で、人事異動の目的や、進め方を説明しました。幹部候補の育成など、人事異動にはさまざまな背景がありますが、企業が目指す戦略に向けて人事異動による人材育成は必要不可欠です。社員の協力・理解を得ながら、企業発展のために適切な人事配置を考えていきましょう。